2009年10月18日日曜日

心つなぐ日米の詩

今年第2回の日米交流朗読会が、ダウンタウンにあるロサンゼルス市立図書館、リトル東京ブランチで行われた。朗読ボランティア耳文庫主催によるこのイベント、昨年同様日本から堀田紀眞さんを迎え、また今年新たな試みとして、アメリカの高校で日本語を学ぶ高校生達に参加してもらうこととなった。


朗読会のプログラムは、まず耳文庫の出し物から。今年は太宰治の生誕100年ということで『走れメロス』をとりあげ、私もナレーションのパートを一部朗読した。

続いて、日本からのゲスト堀田紀眞さんが、山本周五郎の『糸車』の朗読を披露、

その後、ノートルダム高校生達による詩の朗読と続いた。


ちょうど昨年の日米朗読会 から耳文庫のボランティア活動に加わり一年が過ぎたところで、今回は文字通り2回目の参加となる。LAでの生活もこの11月で丸2年となるが、こちらで実感することのひとつがアメリカの若者達の日本語への関心の高さ。日本のアニメなどを通じて日本語にも興味を持ち、なかには独学で学び始める子供達もいるほどだ。いまや日本の経済ともに、80年代をピークに盛況だった日本語ブームも下降の一途で、高校や大学の日本語クラスも中国語におされ減少しているそうだが、それでも、若者達の日本語熱は今も健在、かつてのようなビ ジネス一辺倒からは遠ざかり、日本のカルチャーへの興味へと移行しているのは、むしろ喜ばしいことのように私には思える。日米交流という名のもとに昨年からスタートしたこの イベント、今回は準備段階から関わることができ、こちらで日本語を学ぶ学生達に日本語への理解と興味を深めてもらえればと、 ノートルダム高校で日本語教師をされている庄司先生と協力して日本語クラスの生徒達に参加してもらう運びとなった。


9月の新学期とともにイベントの準備もスタートし、高校の日本語上級の3年生と4年生のクラスで詩の朗読を試みた。日本語を朗読するのは初めてのことであったが、クラスみんなの反応は、「もっと日本語の発音が上手になってきれいな朗読が できるようになりたい」と前向きで、結局3年生のクラスから6名の出演希望者があり、まずは順調な滑り出しとなった。


今回取り上げた詩は、アメリカと日本の詩の2編。それぞれ日本語と英語の2カ国語で朗読するという趣旨で、日本の詩は、高村光太郎の代表的な『道程』を アメリカのものは、日本でも新井満の訳で歌にもなり有名となった『千の風になって』の原文を取り上げた。

『道程』の方は、英語訳が見つからずクラスで高校生達に取り組んでもらうことになった。どうなるかと心配したが、素晴らしい訳がいくつか出てきて中からひとつ選び朗読してもらうこととなった。まさに案ずるより生むが安し!である。

しかし、いざ練習が始まってみると、高校達はそれぞれ部活などに忙しく練習時間の調整が難航、結局みんな揃っての練習ができずに当日を迎え、リハーサルではじめ て通したというようなぶっつけ本番に近いものとなった。それでも参加した高校生達はみんな緊張した面持ちながら、ちゃんと顔上げて一語一語はっきりと心をこめて朗読してくれ、続いて披露した「千の風になって」の合唱もとても感動的だった。観客のみなさんから大きな拍手をいただくと、舞台に並んだ高校生達の表情からすーっと緊張がほどけ、笑顔が輝いていくのを見ながら、まずはみんなといっしょに日米交流の第1歩を踏み出すことができたかなと嬉しさと安堵の気持ちで一杯だった。


最後は、耳文庫の十八番。耳文庫のメンバーの絵による手作りの紙芝居ゴンギツネ。紙芝居を食い入るように見つめる高校生達の表情が印象的だった。

そして、紙芝居の終わりを告げる拍子木の音とともに第2回の日米交流朗読会の幕は閉じた。


朗読会を終えて すぐ、今度はみんなでオリジナルの紙芝居を作ろうと盛り上がっている高校生達。日本語クラスには個性豊かでクリエイティブなメンバーが揃っているそうだ。絵を描く人、文章を書く人、音を奏でる人と、興味は様々で、人材豊富。

さ〜あ、明日に向けて走り出そう! 

        

        


 Be creative!  Enjoy Japanese!!