2008年7月30日水曜日

ある日突然、消えた蓮の花

昨日突如LAを襲った震度5.4の地震。12階の我が家も大きく揺れました。時刻は正午前の11:42AM。部屋の大きな窓ガラスがギーギーと鳴り、思わずベッドにもぐり込んだほどでした。揺れがおさまった後も、しばらくの間窓枠のミシミシという音と共に、窓に垂直に下がったブラインドがまるで振り子のように揺れ続け、背筋が寒くなる思いの数分間でした。あわてて夫に電話するものの回線は繋がらない状態。後で聞くと、オフイスではビルからみんな出されて強制避難となり身動きできなかったそうです。この日午後から日本に出張の夫の方は、帰ってくるやかけこむように空港に向かった次第です。

TVをつけると延々と続く地震の緊急報道。このLA地震は1994年に震源6.7を記録したノースリッジの地震以来14年ぶりの大きなものだそうですが、幸いにも大きな人身事故にはいたらず、ニュースで目にする災難といえば、店の棚から商品が崩れたといったような報道くらいでその後の街の様子も地震があったのが嘘のような静けさでした。

今朝の新聞に、「もし世界のほかの場所でこの地震が起こっていたらきっと大惨事になっていただろう」と記事にありましたが、LAでは前回の地震を教訓に2007年に厳しいビルディングコードが設定され、しっかりとした地震対策がなされたらしくそれが功を奏したというようなことでした。我が家も大きく揺れましたが家の棚から落ちたものは何一つ無く、過ぎ去って思えば、まるで家ごと大きなブランコで揺れていたかのような感じでした。



今回の地震で頭に浮ぶのは13年前の神戸の大震災です。その当時、神戸市に隣接する西宮市に住んでいたのですが 地震の前にNYに転居することとなり、震災をのがれたのでした。そして今回はLAに転居して間もなくの地震との遭遇でした。西宮でも高層の13階に住んでいたので、もしあの時遭遇していたらと思うとぞっとします。今回大惨事にならなくて本当によかったです。地震大国日本から、おまけにこの度、しょっちゅう揺れている東京からやってきたものの、昨日の地震は私が今まで経験した中では最も揺れが大きく、ここ西海岸もまた世界に冠たる地震地帯であることを改めて認識しました。



天災はいつも「ある日突然」にやってきます。そして今や、世界中で耳にする地球温暖化による災害もまた後をたちません。LAも含めカルフォルニアで頻繁に発生している季節外れの山火事。日本もまた季節外れの台風や局地的な集中豪雨、そして海水温度上昇によるクラゲの異常発生などなど、、、、本当に次から次へと現れてくる自然環境の変化に目に見えない不安感ばかりがつのる思いがします。



カルフォルニアでは今年、昨年のまれに見る頻繁な雨のおかげで例年以上に美しい花の季節が迎えられるとあって喜んでいたのですが、そう暢気にうかれてばかりはいられない自然からの警告とも思われるような記事を最近ちょくちょく目にします。



世界でもまれな自然環境に恵まれたカルフォルニアは、ここにしか見られないネイティブフラワーの宝庫だそうですが、今年は、そのいくつかが消えてしまったとのこと、そして今後はその数がますます加速していくとの話です。

春に訪ねたヨセミテ国立公園では地球温暖化による氷河の減少で、ここそう遠くない年月にヨセミテ滝が消滅するというショッキングな警告を目にしました。

そして最近、最もショックを受けたのが、今月上旬 LAタイムズの見出しにあった"Where have Echo Parks' lotuses gone?" という記事の内容。


エコパークは、LAのダウンタウンの北西に隣接する、湖に囲まれた公園で、近くにはチャイナタウンやドジャーズスタジアムなどがあり、古くから市民に愛されてきた公園の一つです。

ここには毎年何百という数のピンクとクリーム色に彩られた蓮の花が咲き、毎年7月上旬に開催されるロータスフェスティバルはLAの風物のひとつですが、今年はなんとひとつも花が咲かなかったというのです!!

まだ一度もその姿を目にしたことの無い私ですが、その記事に「えっ?!」と思わず声を上げてしまったほど驚きました。
仏陀の悟りの象徴、そして泥の中からでも美しい花を咲かせると形容される蓮の花が咲かなくなったなんて なんだか地球の不幸の始まりのように思えてなりませんでした。毎年この蓮の花を楽しみに他州からも多くの人たちが訪れるのだそうで、その蓮の花の数も全米一のスケール
だったとのことです。毎年スケッチや写真を撮り
にやってくる人たちも多く、住民もみんな悲しんでいるとの話でした。私も一度見てみたかったなと、すごく残念です。この現象に前触れはあり、2年前は、かなり遅咲きで、昨年はたった30ほどの花しか咲かなかったそうです。市の対応が遅いと住人は非難しているとのことですが、この地球を汚したのは誰のせいでもないみんなのせいなのではないのかとの思いがします。


蓮の花の消えたエコパークですが、記事を読んで一度週末にでかけてみました。到着したエコパーク、芝生に囲まれた湖には噴水があり、立ち並ぶダウンタウンのビル群を背景に絵葉書のような風情です。芝生に寝転がってくつろぐ人たち、そして街路樹や公園には赤いハイビイスカスやGolden Medalion Tree の黄色い花々が鮮やかに咲いています。何も知らなければ死んでしまった蓮の花のことなど想像する余地も無い平和な日曜日の午後の風景です。

湖水沿いに公園を巡って歩いていると、ボートの船着場があり、そこでチケット売り場の女性に蓮の花のことを聞いてみました。「ロータスフェスティバルなら先週終わったよ。」と言うので、「蓮の花は咲いてたの?」と聞き返したら、「No. I don't know why. 」とぽつり。花が咲かなくてもフェスティバルは開催されたのですね。






エコパークのシンボル"Lady of the Lake"

花はどこへいったのか? 誰も知らない!

ある日突然消えてしまった!










その記事を目にした頃、ちょうど日本で洞爺湖サミットが行われており、ニュースでもとりあげられていました。今回の大きなテーマである地球温暖化対策についての協議、2050年までに温暖化ガスの排出量を半減するとか、、、、

数字の根拠は分かりませんが、そんな遅足でいいのでしょうか? 地球の危機はものすごいスピードで押しよせてきている気がしてならないこの頃です。

2008年7月23日水曜日

誕生日と赤い自転車

今日は誕生日。人生も後半戦にむけてまっしぐらです。

昨晩母から「おめでとう!」との電話が入り、「まだ22日だよ。」というと、「日本はもう23日。」との返答。あっそうか!と今更ながら時間というもののつかみ所のなさに不思議な思いでした。目に見えない時間を計る物差しが数字なら、年齢に表される数字もまた存在して無いがごとし、なんて、都合よく解釈。時間というものもまた、見えなくても存在する心のようにとらえようがないものですね。

今年の夫からの誕生日のプレゼントは、赤い自転車。そのことを伝えると、「じゃあ明日は自転車に乗らないとね〜」と母らしい言葉が返ってきました。


そして今日はLAタイムの23日。母の言葉通り、プレゼントの自転車に乗って近所を一巡りすることに。とりあえず、行き先は夫のジョギングコースの近所の公園。夏の午後の日射しの中、公園では実にいろんな人たちが楽しんいます。ピクニックテーブルを使ってストレッチをする二人組。あんな使い方もあるんだなと感心しながら通り過ぎると、今度は同じくテーブルでトランプに興じるおじいちゃんたち。まるでセザンヌの「カード遊びをする人々」の絵の世界を観ているようです。砂場で遊ぶ子供達とその傍らでおしゃべりに忙しいママさん集団、日本と同じような公園のワンシーンです。自転車から眺める風景は、町の日常を色濃く映し出して、車で一気に目的地に向かうのとは時間の流れも全く違って新鮮に感じられます。なんだか映画のシーンをながめているような気がしてきます。たまにはこうしてゆっくり自転車のペダルをこいで町を眺めて走るのもいいものです。


プレゼントの自転車は、Gelley 製の赤い自転車。家まで乗ってかえって来れるよう近所の自転車屋に出かけて行きました。
きっかけは、メルローズの街を散策中にたまたま自転車屋で目にしたビアンキの白い自転車でした。小さめでちょうどいいサイズで急に自転車に乗りたくなり、ビアンキを取り扱う近所の自転車を調べてでてきたのがBeverly Hills Bike Shop。家族で経営する地域密着の自転車屋さんです。電話をすると親切な応対で早速出かけていくことにしました。

そしてそこで薦められたのが、ビアンキならぬ Gary Fisher の 自転車。LA警察も使っているよとの太鼓判、店に居合わせたお客さんもずっとこのメーカーの自転車を愛用していると加勢する始末、おまけにLifetime Warranty との一押しで、ここはアメリカ、イタリア製のビアンキに勝ち目なし。男性仕様しかないものの、小さいサイズのマウンテンバイク用の自転車を町乗りにもいけるようにハイブリッドのタイヤに変えてもらい、その日即ピカピカの赤い自転車で家まで帰ることとなりました。あとで、調べてみて、Gery Fisher は、マウンテンバイクの創始者で、バイク通にはよく知られたメーカーだとわかりました。

自転車に乗るのは、久しぶり。それも去年10月渡米直前に自転車のハンドルにかけた傘が車輪に挟まり、自転車ごと派手に転倒して以来のこととあって、最初は緊張気味でしたが、しばらく走ると段々肩の力も抜けてルンルンと鼻歌まじり、夏でも天国の様なLA夕方の風に吹かれながらのサイクリングは爽快です。


さて、話を戻して、、、本日誕生日のバイクルートの方は、近所の公園をひと回り、そしてその後、家から一番近いスーパ "OWEN'S" に寄って帰ることにしました。スーパーの袋をバイクのカゴに載せ住宅地の中を抜けて帰る途中、庭の芝生に水遣りをしていた女性が、「そこのスーパーなら配達してくれるわよ」と声をかけてきました。

「自転車に乗りたい気分だったので、」と答えると、とニッコリと笑顔を返してくれました。

 LAで初めて迎えた誕生日です。


2008年7月9日水曜日

LAの夏の風物詩、Hollywood Bowl

いよいよ7月、既に夏本番のLAでは今、野外コンサートが真っ盛り。なかでもHollywood Bowl のプログラムの内容の充実振りは突出です。先月からLAフィルによる夏恒例の野外コンサートのシーズンもスタートし、9月の終わりまで連日コンサートが催され、豪華なゲストを呼んでのプログラムが満載です。私も先月のPlayboy Jazz Festival を皮切りに、7月4日独立記念日の花火打ち上げコンサート、スティービー・ワンダーの公演と、このところ何度か出かけて行きました。


初めて目にしたハリウッドボールのコンサート場、そのスケールと洗練された雰囲気は、さすがエンターテイメントの殿堂といった迫力あるものでした。

入り口でセキュリティーチェックを済ませて入場すると、エスカレータに乗って丘の上の会場に向かいます。

この日は、後方の座席を予約しており、鬱蒼とした緑の樹木の中を抜けながら、更にもう一台のエスカレーターに乗り継いで上へと登っていくことになりました。みんな食べ物をたっぷり詰めこんだバスケットやクーラーを下げてまるでピクニックに出かけて行くようないでたちです。既にピクニックエリアなどではテーブルにお弁当やワインを広げてワイワイ楽しんでいる人たちの姿も目にします。食べているときの姿は、本当にみんな幸せそうで、こちらまでウキウキと楽しくなってきます。

丘の頂上らしきところに到着、エスカレーターを降り会場内に足を踏み入れると、そこは別世界。下方に遠く見下ろすようにシェルと呼ばれる半円の白いドーム状の舞台が臨めます。その舞台を基点に観客席が円錐状に丘の上に広がり、巨大なコンサート会場が山の谷間にドカ~ンと出現。ドームの背後にはハリウッドヒルが見事に稜線を描き、ハリウッドサインも目の前です。自然景観と一体となったなんとも素晴らしいフォーメーションにです。 まるで山の谷間に突如出現した古代の劇場を眺めているかのような第一印象でした。


このHollywood Bowl、1922年に野外コンサート場としてオープンしたそうです。当時の写真を見ると女性はまだドレス姿で歴史を感じますが、人々の楽しみ方は今も昔も根本的には変わっていないのかもしれませんね。オープン当時ボールにはシェルは無く、全くの青空天井だったようです。1929年にコンクリートのアーチが登場し、その後何度か変遷を繰り返して現在のシェルは5代目。過去にはフランク・ロイド・ライトの息子で建築家のロイド・ライト氏が、そして前作はなんとディズニーホールの建築でも注目されたフランク・ゲーリー氏が設計と、会場内のパネルに過去のドームの歴史が紹介されていました。たかがアーチではなかったのですね。シェルは一大建築物なのでした。 現在のものは、音響効果を大きく改善して2004年にお目見えしたそうです。



Playboy Jazz Festival



6月下旬に開催される恒例のジャズフェスティバルで今年で30周年を迎えました。土曜から週末二日間に渡って催され、昼から夜まで楽しめます。土曜日には日本の女性ジャズピアニストHiromi が出演し、後日LAタイムズに、彼女の笑顔の大きな写真入でクリエイティブな演奏を賛辞する記事が載りました。大物ジャズプレイヤー誕生の様相です。


夫と共に出かけた日曜日は、今年グラミー賞に輝いたHerbie Hancock が出演。ハリウッドの空が薄紫に暮れなずんで少しずつ暗闇に変わり始めた頃の登場となりました。その頃には既に会場は満席。後方は木のベンチ席で、すし詰め状態です。座席のキャパシティーは、17,376席だそうです。観客で埋め尽くされた会場はこれまた圧巻でした。

日が落ちると共に舞台は、鮮やかな照明で彩られます。LAに住んでいつも感じるのが光の演出の美しさ!ここHollywood Bowl ではドーム内を帯状に何色もの光の演出が繰り広げられ演奏と光の共演が見事です。LAらしいエンターテイメントの醍醐味を味わえます。ドームの先には暗闇に浮き上がるハリウッドサインと十字架、そして夜空に輝く星と共に自然と人口の光の見事なコラボレーション。これは、きっと世界に一つきり、ここにしかない夢の世界のように思われます。





July 4th Fireworks Spectacular



7月4日の独立記念日は、LAフィルのオーケストラの演奏と花火とのコラボレーションが恒例行事とのことで、この日ちょうど日本からのお客さんがあり、LA紹介がてら再び出かけました。

今回は、前席サイドのボックス席を予約、舞台も目の高さです。4人がけの椅子にテーブルが設置されているのでここでは食事をしながらコンサートを楽しむことができます。
今年の催しは、野球チーム、LAドジャーズの50周年とかで、指揮者をはじめオーケストラの面々もドジャーズのユニホームを着ての登場。ドジャーズの応援歌なども演奏され、往年の監督ラソーダ氏も進行役で登場、そしてOBたちが舞台に上がると会場は多いに盛り上がりました。スライドでも暦年の選手が紹介され、そこには野茂選手の姿も!私たちも一際大きな拍手を送りました。


インターミッションの後、映画音楽の作曲でも有名なランディー・ニューマンが登場、自らピアノの演奏、そして指揮棒を振って曲が演奏され、その後待ちに待った恒例の花火とオーケストラの競演とあいなります。

The Washington Post / Semper fidelis / The Stars and Stripes Forever!  とお馴染みの曲に載って花火が打ち上げられ会場はクライマックスに。オーケストラと花火のコラボレーションは初めてでしたが、音楽にのって夜空に花火が次から次へと打ち上げられる様は豪華絢爛、際立った演出効果と共に最高の花火の祭典でした。

最近新聞で、この所の相次ぐ物価高の為、独立記念日の花火を中止する町もあり、住人が悲しいんでいるとの記事を目にしました。ここLAで、こうして例年通り、豪華な花火でアメリカの記念日を祝うことができたことは、当たり前のことではないんだと思えてきます。「明日という日は昨日の続きにあらず」ですね。こうして今年アメリカで迎えられた独立記念日を大切に心に刻んでおこうと思います。


A Wonder Summer's Night


さあ、いよいよスティービー・ワンダーのコンサート。今夏三度目のBowlとなりますが、予約を入れたのはこれが一番最初。一度は生の声を聞いてみたいと、チケット発売と共に申し込みました。あいにく夫の方は出張と重なってしまい、こちらで最近仲良くなった友人を誘って出かけてきました。ピアニストで、シネマスクリプターそしてTV番組のディレクターとなんとも多才な彼女は、ヨガの指導者でもあり、彼女のヨガのクラスで知り合って仲良くなりました。

この日は最高に理想的なカリフォルニアのお天気。日が暮れる頃には、涼しい風が吹き爽快な空気の中、ワンダー登場までたっぷり友人と会話を楽しむことができ、音楽や映画そしてプライベイトに関することなど話題はあちらこちらに。つい最近知り合ったばかりだというのが嘘のような親近感で、これからもますます仲良くなれそうです。

8時の予定時刻より20分ほど遅れてのワンダー登場となりました。その頃には日もすっかり暮れて暗闇の中、気がつくと会場は既に満席状態、観客の熱気で一杯です。現在57歳のワンダー、伸びのある高音は今も健在。いつもの上を見上げるようにして体全体でリズムを取りながら歌う様もそのままで、聞き進んでいくうちにワンダーそのものが音楽のように思えてきます。今回のコンサートは長女とのデュエットや長男のピアノの演奏と父親譲りの伸びのある歌声、そしてまだ幼い次男のドラムの演奏も登場し、3人の子供たちとの共演の織り交ったとても心温まる内容でした。

今後もハリウッドボールでは、見逃せないプログラムが目白押し。


来週はまた、LAフィルのチャイコフスキーと花火のコンサートに出かけていく予定です。今や人気が高く、いつもチケットが売り切れとなる中国人ピアニストLangLangのボールデビューということもあり、花火と共に楽しみな演目です。



ハリウッドボール、座席によってチケットの値段も10ドル代から用意され、ピクニック気分でお弁当持参で楽しむもよし。会場内にもこちらで評判のPatinaのレストランやデリも入っています。ギフトショップもナイスですよ。
色んな楽しみ方ができる夏のハリウッドボールをどうぞお見逃し無く!


http://www.hollywoodbowl.com/