2008年2月22日金曜日

LACMAに現代美術館がオープン

先週16日ロサンゼルス・カウンティー美術館に新しく現代美術館 BCAM(Broad Contemporary Art Museum) がオープンしました。ポンピドーセンターの建築で知られる建築家レンゾ・ピアノ氏による建物で、美術館正面の目抜き通りWhilsher サイドの入り口に移築されされた、202本のアンティークの街灯の列柱「Urban Light」 と共にLACMAの新名所誕生としてこの所ずっと話題です。
この美術館こちらでは、頭文字のLACMAで、ラクマと呼ばれ住民に親しまれています。http://www.lacma.org/                           
                                         Koons の赤い割れた卵の作品 
シカゴ以西では、アメリカで最大規模、今回加わったBROAD 現代美術館を含めると7つもの建物からなるの総合美術館です。旅先で美術館を訪ねるのは楽しみの一つ、ここへは、10数年前、西海岸を初めて訪れた時に、若冲のコレクターとしても有名なプライス氏の素晴らしい日本美術のコレクションが観れるということでここの日本館を訪ねて以来お気に入りの美術館になっています。

以前アメリカに住んでいた時、多くの美術館を訪ね歩き、いかに膨大な量の日本美術が明治以降海外に流出したのかに驚かされ、ショックを受けました。それから日本美術に対して真剣に向き合うようになり、シカゴに住んでいた時は、アメリカの4大美術館のひとつ、シカゴ美術館(Art Institute of Chicago )の日本美術部門で、ボランティアとしてキューレターのアシンスタントの仕事をやっていました。シカゴ美術館も浮世絵をはじめ日本美術のコレクションは有名で、浮世絵など和紙によるデリケートな作品は空調管理の最も行き届いた場所に保管されており、当時キューレターのヤッセ氏がよく「私たちは美術館の中で一番空気のきれいな場所で仕事ができていいですね」 と、冗談交じりで言っておられました。ここには浮世絵ルームのほか、建築家の安藤忠雄氏が日本の城の空間をイメージしてデザインしたAndo Tadao Roomがあり、 別名屏風Room とも呼ばれて、薄暗い光の中に効果的に屏風や焼き物、能衣装などのテキスタイルが、展示されています。 ここは、又禅Room としても親しまれており、部屋におかれたベンチにただ静かに座りに来る人なども見受けられる美術館の隠れ家的な場所でもあります。
LACMAの日本館、Pavilion for Japanese Art との出会いも忘れられないものです。作品はもちろんですが、日本の美術作品のために設計された建物まであることが何よりも驚きでした。建物に足を踏み入れるとそこは、外の空間とは完全に切り離された全くの異空間。外から差し込む光も柔らかでやさしく、そこに日本の美術品が大切に並べられいます。谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」という本に、羊羹の美しさをほの暗い光越しに眺めてまるで芸術作品のように愛でている所があり、それまで羊羹を一切れの甘い食べ物としか認識していなかった私には、感性を刺激される衝撃的な出会いでした。文明の発達と共に闇を感じることが少なくなってきた現代の生活の中で、きっと随分多くの美が失われているのだな~と気付かされます。
ここアメリカで、日本の美術品の特性を考慮して大切に展示されているのを見ると、それまで美術館で感じていた一抹の寂しさは消え、日本で一握りの愛好家に愛でられるより、こうして展示されひとりでも多くの人々の目に触れることの方がすばらしいことだと思われてきました。そん思いに変えてくれた美術館として強く心に刻まれいます。

今回は、そのLACMAに、新しく現代美術館が登場。オープン前の有名人を呼んでのパーティの様子は、新聞一面に紹介され、記事にもまるでアカデミーのようだと華やかな様子が伝えられていました。写真にはトム・クルー夫妻や、最近サンタモニカのカフェで隣のテーブルとなり、主人と目を丸くしたダスティン・ホフマン、そしてなんと日本のアーティスト、ムラカミ タカシ氏の姿も。今月上旬までMOCAこと、ロサゼルス現在美術館で開催されたムラカミ タカシ展は大好評で、ずっと話題でした。私たちが行った日も入場制限があったほどでしたが、今やムラカミ氏は、LAのセレブリティーなのですね。 http://www.moca.org/murakami/
                                        建物の屋根が特徴的。夜は赤が映えてきれいです。
今回幸いなことに、オープニン前のプレレヴューと、公開日の夜メンバーのための催されたオープニングパーティーに招待され、昼と夜と違った条件で2回鑑賞することができたので、その違いなど含めながら少し紹介していきます。
パーティー会場は、新美術館横にある巨大な白いテントの中、この巨大なテント、プレビューで訪れたときにも人々がここは何をする所かと興味深げに聞いて
いました。パーティー当日の夜は、テントはまるで巨大な円形のスクリーン、そこに白黒の文字が映し出されさすがハリウッドといった演出です。テント内もまた照明が効果的に使われ、ここでは一転してカラフ
ルな色彩の文字が白いテントに映えてきれいでした。JAZZバンドの生演奏と共においしいワインと、フードで、この日のセレブルティーいませんが、十分に華やかな雰囲気で楽しかったです。日本の美術館も夜を開放して交流の場を企画するなど美術館をおもしろく活用していくといいですね。ただ日本と比べて、アメリカでいつも感じることですが、大人が楽しむ時間を持っているということでしょうか?こうしたパーティー会場の主役は、やはり大人が中心です。日本はどこも若者中心社会、そのあたりから変わらないと文化は成熟しないのでしょうね。
団塊世代の方が定年を迎えている今、どんどん大人が楽しむ文化を育てていってほしいものです。
                                         
さて美術館の建物ですが、まず目に入るのが、建物を囲むように設置された縦横のスティールの梁、スパイダーと呼ばれるポンピドーセンターなどにも見られるレンゾー氏の初期のスタイルが使われています。この梁が、鮮やかな赤い色で、初めてプレヴューで見た時は、なんで赤なのだろう?と少し違和感を感じましたが、夜訪れてその印象の違いにびっくり。建物の直ぐ隣に設置された列柱の街灯の光と共に夜の闇に赤が浮き上がって見えてとてもきれいです。建物は3階建てで、建物内へは外に設置されたエスカレーターで一挙に3階の会場まで上がり、階を下りながら観て回るようになっています。エスカレターを昇りきると、踊り場からハリウッドの山がきれいに見渡せ見事です。これも計算のうちでしょうか? そしてウキウキと美術館内に。            Chris Burden の作品 202本の街灯を使った「Urban Light」
美術館内の作品はやはり昼間の光で観る方が断然にいいです。3階のフロアーの半分は、Koons の色鮮やかな楽しい作品が展示されています。今回の招待状や新美術館のポスターにもなっている赤い大きな割れたタマゴの作品もここにあります。タマゴの内側はシルバーで、鏡のよう。前に立つと自分の姿が写りますが、招待状では、そこに美術館の建物の屋根の部分が映し出されています。他にもBalloon Dog と称される青いプードルやシルバーのウサギたち、見た目にはまるで風船で作ったごとく写るのですが、実際は赤いタマゴ同様、スティールでできています。マイケルジャクソンとペットのチンパンジーの等身大の上半身や水槽の中に浮んだ3個のバスケットボール等、観て回るうちにKoons のポップな世界に引き込まれていきます。http://www.jeffkoons.com/ 
     
残りのスペースは、ジャスパー・ジョーンズ、ラウシェンバーグ、リキテンシュタイン、アンディー・ウォッホールといった有名どころのアーティスト作品が部屋ごとに展開していきます。
2階から1階へと、今回特におもしろく観たのは、Robert Therrien という作家の巨大な四角いテーブルと椅子の作品。テーブルの下をくぐりぬけると、まるで小瓶の薬を飲んでどんどんと小さくなっていった不思議の国のアリスの心境です。
そして、Damien Hirst といイギリスの新鋭作家の作品。動物をホルムアルデヒドに漬け込んだ作品が有名らしく、ここにも羊の作品が展示されていましたが、蝶のコラージュの作品にびっくり。離れて見ると色彩の美しい教会のゴシック様式のステンドグラスなのですが、近づいて観ると、なんと何千もの蝶の羽でできていることがわかります。一体何匹の蝶々の羽が使われているのか、驚きと共にその色彩のあでやかさに見とれてしまう衝撃の作品でしたが、作品を作成しているところを想像すると、かなり不気味?! 「 残虐と美の世界」 といったところでしょうか。
最後に圧巻なのは、グランドフロアーに設置されたRichard Serra の巨大中の巨大彫刻作品、「Band and Sequence」 の2点。昨年NYのMOMAに展示され、今回ニューヨークから10日ほどかけてトラックで運ばれ、最終的にここロサンゼルスに展示されることになったものです。
これは、傾斜した鉄の壁といった様相。高さは身長の倍以上、傾斜した壁が弧を描くように内なる空間へといざなっていきます。曲線は滑らかで段々と、壁沿いを歩くうちに茶色の鉄がまるで木肌のように感じられてきます。しばらく壁と壁にはさまれるように狭い道を歩いていくと、広い空間へと解放されます。まるでラビリンス。歩く瞑想といった心境で、フゥーと上を見上げるとそこは美術館の低い天井、
「これが空だったらいいのにな~」という思いと並行して、金沢21世紀美術館で観たタレルの四角く切り取られた空の作品が思い起こされました。
セラの作品をを最後に美術館から次なる空間へ。  新美術館は、Sense of wonder ! の世界。

2008年2月12日火曜日

Year of Rat

2月7日は、Chinese New Year ! Year of Rat の到来とのLAタイムズの記事が目に飛び込む。そうだ、今日から鼠年が始まるんだ~と、心の中でつぶやきながらアメリカに住むアジア人であることの自覚が沸いてくる。これは、日本にいるときっと意識にすら上がってこない感覚なのだろう。アメリカでは自分を主張することの大切さをよく耳にするが、中国という国は、ちゃんと自分の国の伝統を守りここアメリカにおいても自国の文化を確立しているんだな~と、今更ながら感心し、声の小さな日本が少し情けなくおもわれてくる。しっかりと声を前に出して、と自分にも言い聞かせながら、恭賀新年、この一年が健やかなる年でありますよう、そして鼠年はわが夫の年でもあり、大いなる飛躍の年となりますように。

一月には、ダウンタウンのNOKIA Theatreで催されたChinese New Year Spectacular というショーを観てきました。中国各地方の伝統舞踊を歌などを織り交ぜながらショー仕立てで披露するもので、今年で4回目、LA公演のあと、サンフランシスコやニューヨークでも公演される新年恒例のものとなっているようです。昨年末、新聞にこの催しに対して中国本土では、新年を祝う神聖な伝統文化を見世物にしているとの批判的な記事が紹介されていたこともあり、一度観てみたいと行ってきました。スポンサーは、アメリカで24時間中国語と、英語でニュースを放送しているNew Tang Dynasty Television。中国は、既に自国のTV局で自分の国のニュースや文化情報をどんどん送り出しています。
今回のショーの進行役は、中国人の女性とアメリカ人の男性のペアーで、中国人が英語で、そしてアメリカ人がマンダリンで中国の文化を紹介しながら演目を説明し、ショーを盛り上げているのも印象的でした。上演については、賛否両論あるのでしょうが、中国は、ここアメリカにおいて、確実に大きく逞しく成長しながら自分たちの文化をしっかり自分たちの手で発信していっているんだなと実感しました。日本もがんばらなくては!!


鼠年到来以降こちらは、ずっと25度を超えるまるで初夏のような天候が続いています。日本は、関西でも雪が降ったというようなここ冬一番の寒さだというのに、こちらは、このまま春を飛び越して夏になってしまうような陽気です。

週末日曜日は、ダウンタウンのStaple Center で50回目のグラミー賞の授賞式が行われました。
今年のRecord of the yearと Song of the year は、Amy Winehouseの "Rehab"が、そしてなんとAlbum of the year には、東京JAZZでもおなじみのHarbie Hancock の"River:TheJoni Letters,"が選ばれました。ジャズのアーティストがこのカテゴリーで受賞するのは、グラミー始まって以来の快挙とのことでハンコック氏の驚きと共に笑顔がなんとも感動的でした。

続いて、24日はいよいよアカデミー賞と、LAはますます暑く、熱く、なりそうです。