2010年2月9日火曜日

閉幕するPasadena Playhouse


この週末はまたPasadena の町へ、元旦の日から今年はなにかとパサデナづいています。今回向かった先は、Pasadena Playhouse。1917年創立と古い劇場で、かつては俳優学校もあり、Gene Hackman や Dustin Hoffman、また日本人でハリウッドで活躍した俳優のMakoもここで学んだということです。文化のある町パサデナのランドマーク的な存在でしたが、今回の舞台を限りに突然幕を閉じるということになりました。
今回その事を新聞記事知り、久しぶりに夫とともに観劇と出かけて行くことにしました。初めて目にする劇場は、スパニッシュスタイルの中庭のある建物。噴水のある中庭にはカフェが立ち、すでに大勢の人が飲み物を手に集っています。劇場に入る前から気分も浮き立ちます。劇場内に足を踏み入れてみると、大きすぎないスケールの上品な劇場で、天井や壁の装飾はかなり年代もので風情があります。どこか知らないヨーロッパあたりの小さな町の劇場にでも紛れ込んだかのような印象でした。

今回、最後の演目となった「Camelot」は、ブロードウェーではリチャード・バートン、ジュリー・アンドリュースといった大物俳優によって演じられた人気のミュージカルとか。大勢の役者ともに舞台も衣装も豪華な一大ミュージカルだったものを今回はわずか8人の俳優によって衣装もシンプルに、たった1枚の来たきり雀と、斬新かつ実験的に演じられました。
今回演じた役者もみな若く、チャレンジングな演出だというのに、観客席を見渡してみると大半がお年寄り、そして劇場で当日働いているのもみな高齢の方ばかり。後で知った事にはみなさん劇場を支えているボランティアの方達だと言う事でした。

鉄道やオレンジで財を成した富豪によって発展したパサデナの町は、全米でも有数の裕福な郊外の住宅地として知らています。こうしたパトロンたちによって文化も育まれ、Norton Simon Museum や Huntinngton Library といった名高い文化施設も名を連ねています。今回幕を下ろすPasadena Playhouseもそんなパサデナの町の歴史ある文化の殿堂ですが、一方で美術館などが、早くから時代の変化に対応し、子供達への教育プログラム等を充実させニューファミリーを呼び込む努力をしてきたのに対して、こちらは客層を若者に広げることができないまま老築化する建物に、サポーターの老齢化で資金繰りが難しくやむなくの終焉となったようです。

いまや時代はデジタル化一辺倒。文化も教育も、エンターテイメントの世界もすべてが大きく様変わりしています。映像は今や3Dへとよりリアルな迫力を求めて突き進んでいますが、ビジュアルの刺激のみが追い求められ、人間の生の声や体温はどこかへ忘れ去られていくような危機感を感じます。懐かしいにおいのするお店や本屋もどんどん消えていっています。この先時代はどう変わっていくのか? 時代の変化は人間の幸せを無視して、勝手にどんどん、どんどん加速していくように思えてなりません。
舞台が終わったあと、役者のかけまわる靴音がしばらくずっと耳に残っていました。その靴音に生の舞台っていいな〜との思いが湧いてきました。この劇場に響く靴音もこれが最後!
時代の変化についていけないものは消えて行くのが世の常なのでしょうが、この先時代はどう進んで行くのか、先の見えない時代に戸惑いをおぼえるのは私だけでしょうか?
限りなくリアルを追い求めながら、本当のリアルを失っていくな〜と、劇場を後にしました。

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