2008年11月18日火曜日

耳文庫の活動

11月も後半、日本の深まる秋とは裏腹にこちらは、日中の気温が毎日30度近くまで上がりまるで夏のような日が続いています。
先週末にオレンジカウンティーや、サンタバーバラなどの3カ所で同時に山火事が発生、悪い事にはサンタアナという季節風と重なり被害は拡大、民家を焼き尽くす悲惨な事態となってしまいました。火事はおさまったもののその影響で、ここ数日LA町の空は焦げ臭く大気中に熱気がこもったような状態で、夜になっても気温が下がらず熱帯夜のようです。

そんな状況の中、先週土曜日、ダウンタウンにある日系の引退者ホーム、Boyle Hight で耳文庫の今年12回目となる朗読発表会が開催されました。
耳文庫はLAを拠点に活動する朗読ボランティアグループで、1994年に、LA在住の肝付佳寿子さんの呼びかけで始められました。加齢や病気で読書が困難になった方達に本を読んであげたいという思いで一念発起、まずはその当時放送されていた日本語のラジオ番組で同志を募るというところからスタートされたそうです。96年にはNPOの認可を受け、
主に、老人ホームや、日本語学園や寺子屋という日本語親子会などを定期的に訪問し、他様々な交流を通じて、日本の文化とともに正しく美しい日本語を語り伝えていくというミッションを掲げ活動しています。現在、シアトルに転居となった会員が立ち上げたシアトル支部やトーランスやガーデナなど日本人が多く住むサウスベイエリアを拠点に活動するグループなど活動範囲も広がっています。
http://www.geocities.jp/terakoya_la/

ちょうどLAでの生活も落ち着き、何かボランティアの仕事をと思っていた矢先、見始めた日本語放送のTV番組で、作家飯沼信子氏の文章教室が朗読集団、耳文庫主催で行われるとのCMを耳にしました。かねがね機会があればまた朗読も始めたいと思っていたこともあり、早速問い合わせ8月に見学に出かけていきました。
見学したのは、3ヶ月に一度行われる文章教室の日で、そこで選ばれた五つの作品が耳文庫のメンバーによって朗読されました。作品のテーマは「私の宝物」。それぞれのストーリーに驚きや共感があり、和気あいあいと楽しい時間を過ごす事となりました。
メンバーは、こちらに長く住む人たちが多く、年齢も様々ならもちろん人間模様も色とりどり、耳文庫の活動を通じてまたいろんな出会いがあると、参加することにしました。

日米交流ロサンゼルス朗読会

夏の間は忙しく10月から参加した耳文庫、今回初めての「日米交流のロサンゼルス朗読会」が、リトル東京にある曹洞宗北米別院禅宗寺で開催され、入って早々ビッグイベントからのスタートとなりました。
日本側からは、日本人朗読協会の堀田紀寘さんがご主人と来日し、朗読が披露されました。その後日本語を勉強するアメリカの学生の登場で、星新一の楽しい短編小説が元気いっぱい朗読された後、耳文庫からは,ベテランのお二人による森鴎外の「高瀬舟」と、耳文庫の朗読の指導者である、木村秀隆氏の「羅生門」が語られました。
禅宗寺からの演目は、まず写経グループによる、柳澤桂子さんの般若心経「生きて死ぬ智慧」が、そして、秋葉玄吾僧主の道元禅師の「正法眼蔵」を解釈したという「修証義」の声明が、堀田紀寘さの朗読とともに披露されました。この場面では今回舞台となった本殿の仏像が鎮座する仏間のしきりが開かれ、舞台に並べられたろうそくの光の中に凛とたたずむ仏像の姿を眼にしながらといった趣のあるものでした。
入ったばかりの耳文庫でのイベントは、いろんな出会いを運んでくれました。今回日本からご夫婦で参加された堀田さんご夫妻。東京で朗読教室をされてる場所が、私の東京の住まいがあると場所ということで話が弾みました。そして今回の日米交流朗読会の実現は、数年前に急性の膵臓の病気で突然ひとり娘を亡くされるという試練を乗り越えての事だと知りました。娘さんを亡くされてから、精神世界を強く意識するようになったとお話しされていましたが、今回、堀田紀寘さんが朗読された、長谷川摂子の「人形の旅立ち」も死というものを見つめたファンタジー、物語を紡ぐその声は言霊のように私の心に深くしみ込んできました。
今回の日米交流朗読会、作品とととも色んな出会いが心に刻まれた一日となりました。
http://www.emikosroom.com/index.html#

第12回耳庫朗読発表会

11月15日、リトル東京の外れにある、日系の引退者ホームボイルハイツ(Boyle Hight) で開催されました。
私も出演する事になり、ここ数週間は朗読の練習に取り組みました。今回のテーマは、「絆」という事で演目は、親子の絆を描いた芥川龍之介の「杜子春」と、愛馬との絆が主題のモンゴルの民話を元にした「スーホの白い馬」の2作品です。
久方ぶりの朗読、私のパートは杜子春の第4部、仙人の住む山で一人修行をするが様々な魔性に肝試しされる場面です。二つ返事で気軽く引き受けたものの一筋縄では行かず、読めば読むほど自分の課題にぶちあたるといった2週間でした。今回再び朗読をスタートするにあたって自分へ課したことは、「無心の境地」で語るという事、そのことの難しさと朗読の奥深さを今回の発表会を通じて気づくことができいいスタートとなりました。

発表会が行われたボイルハイツ敬老引退者ホームは、カルフォルニアの日系アメリカ人が移住した当初の歴史的な場所にあります。天皇皇后もアメリカ訪問の際には何度か立ち寄られとの事です。ここの看護ホームへは3ヶ月に一度耳文庫のメンバーが訪問して朗読を行っています。
敷地内にいくつかの建物があり、その中にコンサートホールがあります。今回の発表会はそこで行われました。ホールの入り口は、アンブレラとテーブルが並びちょっとオープンカフェのようです。そこではボランティアの人たちの手作りにケーキが用意され安い料金で食べられるようになっています。そこは日だまりのよう、温かな空気が流れています。ほのぼのと明るい雰囲気の老人ホームです。私たちのイベントの前後にもお茶や詩吟といったクラスの集まりがあり、様々なボランティアの方が頻繁に活動されているようでした。

朝の10時から、書道の手書きのポスターに色画用紙で作った紅葉を貼ったりと、まるで学芸会のような準備のあと、リハーサルを終え、お昼はみんなの持ち寄りのポットラックスタイルのランチを囲んでわいわい。そして午後1時半から始まった今回の手作りの発表会も無事に終了しました。夕方オープンカフェでの反省会、その時、ふと焦げるようなにおいが鼻を突きました。
そこで初めて知った今回の山火事。見上げると空は、まるで幕が張ったように灰色に煙っています。
ダウンタウンから西に向かって家に帰る道中目にした夕日はいつもと異なり不気味に赤く、まるで炎の玉のようででした。

耳文庫の集会は、毎月第1、第3土曜に、リトル東京のメリノール教会で行っています。
連絡先は213−748−9955
ご興味のある方は、こちらまで。

0 件のコメント: