2009年1月26日月曜日

My First Opera "MAGIC FLUTE"

突然の友人からの電話、風邪を引いたので、代わりにオペラを観にいかないかとのこと。
演目はLAオペラ主催の "Magic Flute" 、モーツアルト最後のオペラ作品です。
ちょうど数日前にユニークな衣装の写真入りで舞台の様子を紹介した記事を目にし、興味をそそられていたところで、二つ返事で承諾。ダウンタウンに住む友人を誘って初めてのオペラ観劇に出かけてきました。
場所は、ダウンタウンのMusic CenterにあるLAオペラ専属劇場、Dorothy chandler Pavilion。その向かいにはLAフィルハーモニックのWalt Disney Concert Hallがあり、その他、Mark Taper Forum 、Ahmanson Theatre といった劇場を合わせ持つMusic Center は、NYのリンカンセンターに並び、アメリカでも三つの指に入る大規模な文化施設です。近くには、磯崎新氏建築の建物としても知られる現代美術館、MOCAもあり、Grand Avenue 沿いのこの一帯は、さしずめLAの芸術、文化のメッカという所でしょうか。

LAオペラの歴史は新しく、以前はNYオペラが定期的に巡業公演に訪れていたそうです。現在は、世界的に有名なテノール歌手、Placido Domingo が総監督を務め、年間のシーズンを通じてプログラムが組まれています。
今期5作品目となる今回の演目は、"Die Zauberflote" 、モーツァルトがドイツ語で手がけた生涯最後のオペラ作品として知られる"Magic Flute" 、「魔笛」です。
     Dorothy chandler Pavilion前、広場の噴水は、夜のイルミネーションとともに見事です。
LAに転居する前年の2006年、日本でモーツアルト生誕250周年を記念してNHKの衛星放送で「毎日モーツァルト」という番組が放映され、文字通り月曜日から金曜日まで1年間に渡って毎日一曲ずつモーツァルトの珠玉の名作を彼の人生の奇跡とともに紹介するという10分間の番組がありました。私もまさに「毎日モーツァルト」で、その番組をきっかけに今までのモーツアルト観が一転。それまでは、たぐいまれな才能に恵まれた夭折の作曲家、といった通り一遍のイメージしか持ち合わせていなかったのですが、その波瀾万丈な人生に圧倒され、モーツァルトが人生の中で様々な壁 にぶつかりながらも常に音楽を愛し、いつも自由で情熱的に妥協のない生き方を貫いたことに感動、番組 を見終えて、その35年という生涯は決して短くはなく、もうこれ以上は生きられないほど燃焼して生きたんだと感慨無量でした。そして私の中で、雲の上のモーツァルトから生きた人間モーツアルトとして変化、モーツアルト開眼となりました。遅ればせながら、NHKさん、素晴らしい番組をありがとう!

そんな個人的な思い入れもあって、今回初めて観るオペラの演目が、モーツアルトの "Magic Flute"とは!、心踊ります。

モーツアルト最後の作品として有名な「魔笛」は、当時困窮のどん底にあったモーツアルトが、ウィーンで書き上げた念願のドイツ語のオペラ作品。当時ウィーンでは、大衆劇が人気を集め、旅回り劇団の座長、シカネーダともに作り上げたこの作品は、従来のオペラ作品とは全く趣の違う、形式にとらわれない自由なスタイルのオペラとして登場したそうです。
舞台は、年代不詳のエジプト。まず舞台は王子タミーノが大蛇に襲われるシーンから始まります。LAオペラは、いつも衣装や舞台美術が斬新で目を引くそうですが、今回の舞台も驚きの色とデザインで多いに楽しめました。クラシカルなイメージのオペラとは印象が違います。カラフルな大蛇にピエロのような衣装の鳥刺しパパゲーノ、高僧ザラストロの衣装は猿の惑星?
ぬいぐるみのライオンは、まるでブロードウェイのライオンキングと、観てるだけでも充分楽しめます。
物語は王子タミーノと、愉快な鳥刺パパゲーノの奇想天外な御姫さま救出劇。
タミーノは、夜の女王からさすがった魔法の笛を、パパゲーノは、魔法の鈴をもって女王の娘パミーナを助けに出かけます。
様々な試練に直面しますが、二人には3人の童子が付き添い、いざというときには、空中に浮かぶコウノトリの船に乗って彼らを助けにやってきて、ボーイソプラノの麗しい歌声を披露します。そして目を見張るばかりの圧巻な衣装で登場した夜の女王!作品中の難曲「夜の女王のアリア」を極めて高い技術を要するとされるコロラトゥーラ ソプラノで見事に歌い終えるや会場は拍手喝采の渦に包まれました。
舞台は上品で生真面目な王子と、下品な言葉を吐いては観客を笑わせる陽気なパパゲーノを軸に展開していきます。主役は、もちろん王子タミーノですが、強烈な個性を放ち生を謳歌してありのままに生きるパパゲーノに段々魅了されていきます。そして舞台を見終わった後、王子も、パパゲーノも人間そのもの、モーツァルトその人、のように感じられました。
生きる喜びを体中で表現するかのように歌うパパゲーノのアリアでは大好きなグロッケンシュピールの音色が混じり、その澄んだ響きが今もよみがえってきます。      夜の女王の衣装はとびきりfantastic!

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